総務省で携帯市場評価会議、「官製不況ではなく構造改革中」
8月の携帯電話・PHS出荷数は、前年同期比で48%減と大幅に減少しており、一部では「官製不況」と指摘する声もある。
分離プランの導入によって端末価格が明示された一方、代金を支払った端末にSIMロックが必要かどうか議論すべきと指摘した。
携帯キャリアが回線とサービスと端末をバンドルしていることが一番のネックではないか。
そこを分離するのが産業発展になるとすると、キャリアに焦点を当てざるを得ない
新販売方式から一年、日本のケータイ市場は何が変わった?
しかし、メーカーは通信サービスを支える企業である一方、携帯電話事業者のように免許や許認可を受けたり、間接的に国の資本が入った企業ではなく、株主が出資した私企業に過ぎない。
その私企業に対し、「海外に進出しろ」といった事業の方向性を強く促すのは、果たして、国の姿勢として、正しいのかどうかは非常に疑問が残る。
今回の会議でも少し近い話題が出ていたが、たとえばノキアが世界最大のシェアを獲得できた背景には、ちゃんとした理由がある。
もちろん、端末や基地局など技術面で優れていることもあるが、ある程度ケータイに詳しい人ならご存知の通り、ノキアはGSM方式に関する特許を数多く持っており、GSM方式の端末を安価に製造できるというアドバンテージがある。
これに加え、政府が税制など、さまざまな形で同社を優遇し、世界に事業を展開しやすい環境を整えることで、成長を遂げてきた。
シェアの獲得についてもすでにある程度、ケータイが普及しているヨーロッパなどの地域だけでなく、アフリカなどの発展途上国向けに安価でシンプルな端末を販売することで、高いシェアを獲得できている。
ちょっと言い方は悪いが、モバイルインターネットの活用が発展していない国に対し、枯れた技術を使った安価な端末を数多く販売することで、しっかりと販売台数を稼ぎ、大きなシェアを獲得している側面もあると言えるわけだ。
もし、本当に国として、ICTの国際競争力の強化を目指し、国内メーカーの海外進出を促したいのであれば、どうすれば国内メーカーが海外に出て行きやすく、事業を展開しやすくなるのかを議論すべきではないのだろうか。
ところが、会議の内容を見ていると、どうも国内メーカーの事業展開にダメ出しをするばかりで、建設的な意見が出てこないように受け取れてしまう。
国内メーカーと海外メーカーでは生い立ちも違えば、置かれている環境も違う。
そのことをきちんと理解したうえでなければ、このまま、議論を進めても良い結果は得られないような気がするのだが……。
少なくとも現状を見る限り、日本のケータイ市場は『不活性化』とも言える状況へ向かいつつある。
「構造改革に伴う痛みだ」という意見に理解できる部分もあるが、痛みを伴っているのが事業者だけでなく、業界を支えるメーカーであったり、恩恵を受けるはずだったユーザーにも及んでいるのは、やはり、気になる点だろう。
「幅広いユーザーのニーズに応える」を合い言葉に、大量の新モデルを一気に並べ、「さあ、どれかひとつは気に入るでしょう」とばかりに売り出す姿勢が本当に好ましいことなのかどうかは、もう一度、考えるべき時期に来ているのかもしれない。
ケータイは回線や端末を「売る」ことだけが目的なのではなく、「使ってもらう」ことが大事なはずだ。
使ってもらうためにはもっとケータイを知ってもらう必要があり、その部分が欠けていたからこそ、現在のような状況に陥ってしまったのかもしれない。